正信偈唱和
歎異抄
歎異抄講義(上)・本文
たとえば、禅宗のほうで有名な話があります。インドから中国に禅を伝えてくださったのは達磨大師です。この達磨大師が、中国に来られたというので、梁の武帝が非常に喜んで、ご招待して、質問をしたというのです。
「大師は、禅をわが中国に伝えてくださいましたが、私は仏教を尊び、多くの善いことを行ってきました。これによって、どういう功徳がありますか」
と聞いたそうです。そうしたら達磨大師は「無功徳」と答えたのです。功徳というのは、すぐれたはたらきということです。すぐれたはたらきは何もありませんというのが功徳です。何か良いことがあるから座禅を組んでいるのではないですかと聞かれたとき、達磨大師は「無功徳。良いことなど、何もありません」と答えたのです。それで武帝は驚いて、
「何をいわれるのですか。功徳が何もなければ、行うわけでがないじゃないですか」
と、いったら、達磨大師は、
「まったく、ここに話のわかる人は誰もいない」
といって、さっさと帰っていったのだそうです。
(人間のはからいを超えた真実の功徳 224頁15行目~225頁10行目)