正信偈唱和
歎異抄
歎異抄講義(上)・本文
仏教の戒律に、五戒というものがあるのです。殺すな、盗むな、邪淫するな、嘘を着くな、酒を飲むな、これが五つの戒律です。五つの戒律は、すべてのものが守らなければなりません。社会生活を成り立たせるために必要な定めです。そう聞けば、なるほどと私たちは思うのです。殺してはいけない、盗んではいけない、邪な性関係をもってはいけない、嘘はつけない。こういう四つの間違いをするのは、だいたい酒が縁になるから、そもそも酒を飲むのがいけない。酒を飲んで、馬鹿な話をしているうちに腹が立ってきて、喧嘩して結果的に殺し合うとか、そういうことになるので、酒を飲むなといわれるのです。
これが最低限の戒律だといわれるのですけれども、どの戒律の一つも、本当には守れない。あるいは、これを守っていたら、生きていけない。そういうような立場、生活状況というものも、現にあるわけです。山の猟師、海の漁師は、殺さなければ生きていけない。安いものを盗ってきて、高く売ってそれで暮らしていく。そういうのが、罪悪だといってしまったら、助からない人がどんどん出てくるということです。
(罪悪も業報を感ずることあたわず 197頁6行目~197頁16行目)