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Home トップページ  >  今月の法語  >  「他力の悲願は、かくのごときのわれらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。」       『歎異抄』第九条

2024年12月
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「他力の悲願は、かくのごときのわれらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。」       『歎異抄』第九条

「他力の悲願は、かくのごときのわれらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。」  『歎異抄』第九条

 

二〇二三年二月十九日東京ドームでは、カリフォルニアのロックバンド“レッド・ホット・チリ・ペッパーズ”の単独ライブが開催されました。約十二年ぶりの来日ともあり会場は五万五千人のファンで埋め尽くされ、後半のクライマックスには会場全員がスマートフォンのライトを照らし、バンドの代表作「アンダー・ザ・ブリッジ」を大合唱しました。

 

見知らぬ人同士がひとつの楽曲を、同じ時間と空間の中で共有することで生まれる不思議な一体感。なんとも心地よい時間、音楽という媒介を用いて「心がひとつになる」感覚です。その瞬間だけは、日常の悩みや考え事は吹き飛び大きな喜びが起こります。コンサートやライブに足を運んだ人は誰もが経験のある感覚ではないでしょうか。気持ちをリセットして、気合を入れて明日からまたがんばろう。と自分を奮い立たせるのです。

 

しかし、人生における悩み苦しみは尽きません。一時的に発散したり気を紛らわしたりしたところで、ライブが終われば日常が帰ってくるように、一時のストレス発散も、喜びもすぐに色褪せてしまいます。悩み苦しみが尽きないから、一時の喜びに縋ることを繰り返してしまう。深く考えるのは疲れるからやめよう、またどこかで発散すれば良い。これが私たちの身の事実だと思います。

 

「仏かねてしろしめして、煩悩具足の凡夫とおおせられたることなれば、他力の悲願は、かくのごときのわれらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。」

(真宗聖典六二九頁)

 

煩悩具足の凡夫である自己の事実に真向いになられた親鸞聖人は、私たちの悩み苦しみの原因を「煩悩の所為なり」と明確に教えてくださいます。他人のせい、社会のせい、自分の心の弱さのせいとかではありません。それは煩悩のはたらきである。それが、私が今生きているという真実であると教えてくださいます。

また、深く考えるのは苦手、一時の発散で良いと、易い方へ易い方へ流れていく心も、煩悩のはたらきである。それを全て知りとおしてくださった阿弥陀仏がそんな私のために本願を立ててくださった。他力の悲願はこのような私一人のためであったのだと仰ってくださいました。

 

私は證大寺昭和浄苑で毎朝、勤行しご本尊に手を合わせる日々を送っております。親鸞聖人のお念仏の教えに出遇い、聴聞させていただいております。一時の発散など必要ありません。私一人を救おうと願ってくださる阿弥陀仏の本願に照らされております。そのご本尊さまのお姿が、とても頼もしく、有難いのです。私は煩悩のおかげで、人生を活き活きと生きていくことができるのだと、今は感じております。

 

森林公園昭和浄苑 山岡 恵悟

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