「あなたの宝物なんですか?」
私たちが生きていく中で、それぞれが大切にしている「宝物」があります。それは人によって違いますし、ある時は目に見えるものであったりまたある時は目には見えないけれど、心の中で大切にしている何かかもしれません。
例えば、家族や友人との絆、長い時間をかけて築いてきた信頼関係、大切な人との思い出
もしくは自分が頑張ってきた証である仕事や勉強の成果など、様々な形で宝物が存在します。これらは、誰にとってもかけがえのないものであり、日々の生活において大きな意味を持つものです。
でも、時には、その大切にしてきたものが、突然失われてしまうことがあります。人間関係が変わったり、大切な人との別れが訪れたり、計画通りにいかなかったりと、予想もしなかった出来事に直面することがあるでしょう。
そういった時、私はどうしても心が乱れ、自分の価値や存在意義に対して不安を感じることがあります。
そんな時、私はいつも自分の心の中に問いかけてみます。「私にとって、本当に大切なものは何だろう?」と。
本当に大切にしている「宝物」は、失われることがあるものでしょうか?もしかしたら、それは目に見える形ではなく、もっと深いところにあるものかもしれません。
それは、心の中でいつでも感じることができるもの、誰かが自分に与えてくれた無条件の愛や優しさ、自分が他者に対して持っている思いやり、そして日々を生き抜いてきた自分を支えてくださるお蔭さまの願い。これらは、誰にも奪われることなく、常に私と共にあります。
たとえ外の世界がどんなに変わろうとも、私の心の中にあるこの「宝物」は、いつでも自分を支えてくれる力となるのです。この力の源はどこから来るものでしょうか。
私は日々、お寺で「お念仏」の教えを聞いています。常に阿弥陀如来の無限の慈悲の光に包まれて生活しております。阿弥陀如来は、私一人を救済するという願いをもって、その身を投げ出されました。その結果として、私に「南無阿弥陀仏」というお念仏を与えてくださったことを学んでいます。この「お念仏」こそが、私にとっての本当の宝物なのです。いつでもどこでも持ち歩ける心のお守りのようなものです。人生の中で、何があっても失われることのないこの宝物こそが、私にとって本当に大切なものではないかと思うのです。
私たちが生きるこの世は無常です。財産や地位、名誉などは一時的なものであり、いつか必ず失われるものです。
そんな中で、誰しも何らかの悩みや不安を感じることがあるでしょう。仕事や学校のことや友達関係、将来のことなど、色々と考えることが多いと思います。そんな時に、ふと自分の心の中に問いかけてみてほしいんです。「私にとって、本当に大切なものは何だろう?」と。
すると、心の深いところから「あなたは一人じゃない、私はいつもあなたと共にいるよ」
という声がきっと聞こえてくると思います。
その瞬間、心が少し落ち着いて、また今日一日生きてみようという気持ちになれるのではないでしょうか。
私にとっては、この心の支えが、私の一生の宝物となっています。
この永遠に色褪せることのない、最も貴い宝物を心にいただき私は今日も生きていくのだろうと思います。
続命院證大寺 大空