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Home トップページ  >  今月の法語  >  死にむかって進んでいるのではない 今をもらって生きている 鈴木 章子

2012年07月
死にむかって進んでいるのではない

今をもらって生きている

鈴木 章子

鈴木(すずき)章子(あやこ)さんは、北海道の真宗大谷派西念寺の坊(ぼう)守(もり)(奥様)でした。42歳の時に乳癌が見つかり、その後肺などに転移し、5年間の闘病生活の後、昭和63年に47歳で命終されました。章子さんは闘病中に四人の子供達へ詩を残されています。その中から私が感動した、『変換』と題する詩を紹介致します。

 

死にむかって進んでいるのではない
今をもらって生きているのだ
今ゼロであって当然な私が
今生きている
ひき算から足し算の変換
誰が教えてくれたのでしょう
新しい生命
嬉しくて 踊っています
“いのち 日々あらたなり”
うーん 分かります

 

 さて、私は30年程前に膵臓を煩って闘病生活をしました。この詩がその頃に紹介されていたら、章子さんの言葉に頷けなかったと思います。当時は、「死にむかって進んでいるのではない」どころか、「死にむかって進んでいる」と感じたからです。ですから、「病は気から」の如く、気力で闘病しましたので、「今をもらって生きている」とは感じませんでした。ところが病気が縁となり、京都大谷専修学院で仏教を学び、師から日々「貴方は誰か」と、自己を問う生活をしましたので、今はこの言葉に感動しています。
さて、次の言葉に、「今ゼロであって当然な私が今生きている」とありますが、私達は両親を縁としていのちを賜り、この世界に生まれました。そして育てて貰い、教えて貰い、又、大地大海の恵みを貰うなど多くのご恩を貰っています。このご恩を、「お陰さま」と申します。
 さて、章子さんはここで、「ゼロ」と言われていますが、ゼロとは何でしょうか。私達は今話しました様に全て貰ったものです。それが私達の様な仮の形と成って存在しているのです。時には病気や、怪我や、老いや、死も貰ってしまいます。全てが関係性において変化していますので、「これが私と言える確かな実体(自性)」など有りません。それが章子さんの言われた、「ゼロ」の意味です。
ところが私達は実体が有ると思って固執してしまう。この固執を、「我執」と言います。釈尊は真理に暗い私達に、この我執を崩壊させる為、ゼロを知らせる道理を説きました。それを「縁起」と申します。章子さんはこの「縁起」を「ゼロ」と言い換えたのです。そして章子さんは末期癌の為に命終してもおかしくない私が、今、当に生きるご縁を貰ってこの瞬間に存在している感動を、「今ゼロであって当然な私が今生きている」と表現されました。
 さて、ここで縁起を例えて説明しますと、私は先程話しました様に、お陰さまの内容を貰って社会人に成りました。20代の時に病気に成り、病気が縁で学院に入学し、仏教を学んだことが縁で僧侶に成りました。僧侶に成ったことが縁で、通夜、葬儀、法事のお勤めをしています。このことが縁で法話会が発足して担当することに成り、又、ともしび掲示板の原稿も担当しています。この様な一連の関係性が無ければ、今、僧侶としての私の存在はあり得ません。全て関係性によって存在し、単独では存在しない道理が、「縁起」の教えです。
 そして章子さんは、「ひき算から足し算の変換」と喜びました。私達は平均寿命まで、いやそれ以上生きたいと思うこともあるでしょう。しかしいのちは縁起しますので、他との関係性により存在し、関係性が無くなれば全て無くなります。今、存在していることが、「今を貰っている」証明です。それを章子さんは、「ひき算から足し算の変換」と言われました。
 下半期のテ-マに対して私は、釈尊の教えを聞いて、章子さんが言われた、「いのち日々あらたなり」と実感出来る存在に、「変換」されることが、生きる意味だと思います。それは“今日一日限りのいのち”として受け止められるからこそ、与えられた仕事や使命などに、完全燃焼する意欲が生じるからです。
橋昭和浄苑 加藤 順節

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