二年前にお葬式のご縁をいただいた方の話です。通夜式が始まり、私が会場に入堂すると、三歳から九歳の四姉妹のお孫さんが、全員会場の最前列に座っておりました。静粛を重んじることの多い現代の通夜・葬儀式では、小さいお子様はお母さんと一緒に後ろのほうの席におられることがほとんどですが、ここでは四姉妹が最前列で、お母さんは後ろの席でした。珍しく感じたのと同時に、四姉妹から見て祖父さまにあたる故人様は、どのような思いご縁があったのかと、そのお心を少し嬉しく感じました。いつも通夜式でお話をさせていただく時は、立ち姿でお話をいたしますが、その時はお話の途中からは低い姿勢で、四姉妹の目線でお話をさせていただきました。
祖父様は子供達を大変可愛がっておられ、子供達も祖父様が大好きだったから、一番近くに見えるようにしてあげたかった。とお母さんが話をしてくれました。私はその四姉妹に、祖父様へ「ありがとう」と、感謝のお念仏を申しましょうとお話しました。大好きな祖父様の前で、まるで声をかけて話しかけるように、小さな手で合掌し、通夜式、そして翌日のお葬儀式もしっかりと「ナムナムナム」とお念仏を申してくれました。
その後、祖父様の四十九日の法要のご縁をいただき、ご自宅に伺いお勤めさせていただいた時、また同じように四姉妹が最前列におりました。
手には四人おそろいの、七色の輪ゴムで結ったお念珠を持っていました。周りの皆と同じようにやりたいと、今日の法要に向けて四姉妹で手作りしたその念珠に、しっかり手を通して、四姉妹がそれぞれにお手を合わせておりました。私は法要開式前に、お念仏の声を出す練習を行いました。「ナムアミダブツ。ナムアミダブツ。ナムアミダブツ」ご法要が始まり、最前列から四姉妹の大きな声のお念仏が「南無阿弥陀仏」とハッキリ聞こえました。
「最前列で大きな声だしたから、じいじに届いたね」とお母さんが声をかけ、四姉妹も笑顔でした。そのお姿を見て、仏さまとなった祖父様を通して、仏法の意義が相続していくことを拝見しました。
「かくのごとく決定してのうえには、ねてもさめても、いのちのあらんかぎりは、称名念仏すべきものなり。あなかしこ、あなかしこ。」(真宗聖典八三三頁)
祖父様に「ありがとう」を伝えたいという気持ち一つが定まり、ただのお別れで終わらせない、仏さまとなった祖父様と共に歩む生活が始まりました。
そして先般、その方の三回忌を迎えました。四姉妹は皆それぞれに自分のお念珠を持っていました。
「法要は、最前列で!」と長女が声をかけ、大きくなった四姉妹が集まり、最前列でそれぞれに大きな声でお念仏を申します。第十八の念仏往生の誓願のこころが、後世に受け継がれていくことを大変有難く感じます。私も共に感謝のお念仏を申して参ります。
森林公園支坊 山岡 恵悟