今月の言葉はサン=テグジュペリの著書『星の王子さま』に出てくる言葉です。
『星の王子さま』は、砂漠に不時着した、主人公と、彼方の惑星からやってきた王子さまとの物語です。
王子さまがいくつもの惑星をまわり、地球へやってきました。ある時、庭にたくさんの薔薇を発見しました。王子さまは宇宙に一本しかないと思っていたのに、ありきたりの薔薇を持っていただけだと悲しみました。そのあとにキツネと出会い、友達となり教えられました。別れ際にキツネは
ぼくの秘密をいうよ。
すごくかんたんなことだ。
心で見なければ、よく見えないっていうこと。
大切なことって目には見えない。
と教えてくれたのでした。
王子さまはたった一本の薔薇を大切にしていただけなのかと悲しみ嘆いている。しかしキツネに出会ったことで、王子さまは本当に大切なことは目にはみえないことだと気づいたのだと思います。
私が感じることは、「目に見えないものを大切していない私」ということです。
逆に考えると「目に見えることを大切にしている」私がいるということだと思います。
目に見えるものは、何であろうかと考えると、優劣、美醜、貧富なのかと無意識にもそんなことで判断していると思いました。
それは相手だけではなく自分自身も評価してしまう。昔いわれた言葉で「マイペースだよね」と言われたことがあります。ただマイペースという言葉だけを受け取ると、その時の私は「ああ自分は仕事が遅いし劣っている」と感じたのです。自分さへも目に見えるものとして判断していく優劣の感覚は、なかなか根深く私自身を苦しめているように思います。
『星の王子さま』の「大切なことって目には見えない」の「目には見えない」という一節は、私が受け取るには「尊い」ということではないかと思いました。
『仏説無量寿経』には
吾(われ)当(まさ)に世において無上尊となるべし
(『真宗聖典』2頁)
試訳致しますと、「私はこの世において、誰とも代わることの出来ない、尊いいのちを賜り、全生命をかけて自らが取り組む課題や使命をあきらかにするために生まれてきたのです」となります。釈尊がご誕生されたときに宣言された言葉です。
私たち自身も尊い身をもって生きていることを教えてくださっている言葉だと思います。
自分の尊ささえ忘れているそんな私にも呼びかけてくださる言葉です。
「大切なことって目にはみえない」というこの言葉は、相手を大切に思っていなかったのだと思いました。またそれは自身のことさえ大切に思っていなかったのだとも思いました。
まず私が尊い存在として頂くことに相手を尊いと見ていけるのだと思います。
江戸川本坊 島津俊道
参考 サン=テグジュペリ訳管啓次郎
『星の王子さま』角川文庫